舞い落ちる文字のすき間で

第一話

改札を抜けると、ぬるい春の風が頬を撫でた。見上げれば、遠くに見える桜並木が薄紅色に揺れている。今年もまた、あの季節がやってきたのだ。

階段をのぼり、いつもの歩道橋の上に立つ。眼下を通り過ぎていく車の群れと、絶え間なく流れる街の喧騒。その中で、ただひとつ変わらないのは、風に舞う花びらの静けさだけだった。

誰に聴かせるでもなく呟いた言葉は、春の明かりの中にそっと溶けて消えていった。振り向いても、そこにはもう誰もいない。けれど胸の奥には、いつまでも鮮やかなあの日の温もりが残り続けている。